現場において的確な楽曲を投下していくセレクターであると同時に、MCとしてマイクを通してフロアをルールしていくレゲエ特有のサウンドマン・スタイルを体現する。BK。彼が湘南乃風のバック・セレクターを長年務めてきた(現在も継続中である)ことは風一族(=湘南乃風の心酔者たち)には広く知られていることでもある。彼のストーリーを語る上でハズせない湘南乃風との出会い。彼のキャリアのスタートは、4人と知り合うほんの少し前へと遡る。
 高校時代、バイト先のラウンジバーに置いてあったターンテーブル。DJをしていたバイトの先輩に誘われて行った、地元クラブで回したのがきっかけだった。高校卒業後の1998年、上京して新宿のクラブ・スタッフをしながら本格的にDJ活動を開始。当時はミドルスクール期のHIP HOPをメインにプレイ、渋谷FAMILYや池袋BEDなどジャパニーズHIP HOPを筆頭に当時様々なジャンルの興隆で活況を呈した都内のクラブに週3日のペースでクレジット(今作参加のEELMANやサイプレス上野ともこの頃に知り合っている)。その後、最大の転機は早々に巡ってくる。『OCEANIZM』という当時はまだ珍しかったレゲエとHIP HOPの融合イベントの出演者に、現在の湘南乃風のメンバーやINFINITY16がいた。
「こんな音楽があったんだ! と完全に衝撃でしたね」
 特にプレイヤーとして影響を受けたのが、レゲエ・サウンド。回し手として「なんて自由なことをやってるんだろう!」と痛感したという。そこからレゲエ・レコードを買いあさり、HIP HOPとレゲエのミックス・プレイ〜HIP HOPのパーティでレゲエを回すDJに、さらに20歳になる頃にはセレクションとともにMCも開始、短期間にスタイルを変遷させて一気にレゲエに傾倒していく。そして。
「一緒にやっていこうぜ。俺らは絶対勝ち上がるから」
 レゲエ文化の重要な要素のひとつであるオリジナルのダブ録りや現場でのリンクを重ねていた湘南乃風の若旦那からの誘いを受け、134RECORDINGSへ合流。その後の活動は、冒頭でも語った通り多くの人が知るところだ。インディ時代のミックス・テープ制作を始め、ファースト・アルバムでの〈KRAZY〉リディム使いのミックス音源など湘南乃風名義の作品はもちろん(直近ではリリース直後の『湘南乃風 〜湘南爆音BREAKS! mixed by The BK Sound〜』がある)、ステップ・アップして行く彼らのビッグ・ステージをともに経験、様々なチャンスを自身のキャリアに変えながらアーティストとしての自覚が徐々に芽生えていった。「30歳になるまでに必ず自分のソロ・アルバムを出したい」という、常に間近でその前進と葛藤を目撃してきたHAN-KUNの言葉が影響しているのも否めない事実だ。
「9月19日生まれなんでギリギリ間に合ったかなって(笑)」
 30歳の誕生日を目前に控えた2010年9月1日、念願のファースト・アルバムをリリースする。バンド・セッションによるキヨサク「DAYDREAM BELIEVER」と細美武士「BLESSING」、BLACK SCORPIONの名リディムを使ったEELMAN「ANGEL」以外のトラックはすべて自身で制作、ジャマイカでの作業を敢行するなどプロデュースにこだわった独自の新録ミックス作品というのが、その正体だ。「同世代で一番ヤバイトラック・メイカー」と語る盟友SONPUBと共作した「INTRO」から、ワールドクラスのレゲエ・クルーT.O.K.が尖ったダンスホールを魅せる「OH OH OH」。湘南乃風「BAD NUMBER」では良く知る兄貴たちだからこそBK流に新たな一面を引き出してみせた。中東系の変則トラックをさすがのDee JayスタイルでHAN-KUNが乗りこなす「ARABIAN DANCE」。力作だと自負するドラマチックでキャッチーな「I wanna party」は、姐御MINMIとジャマイカのトップ・アクトASSASSINを招いたパーティ・チューン。シンガー&Dee Jayという王道コンビによる英詞のかけ合いも聴きどころだ。MONGOL800のキヨサクとともに偉大なる先人へのリスペクトを詰め込んだビッグ・チューン「DAYDREAM BELIEVER」は、ジャマイカにてレコーディング(スタジオはかのTUFF GONG! 録音日がボブ・マーレーの誕生日だというガイダンスも)。リリックに隠されたメッセージにも注目したい。UKを彷彿させる洗練されたアーバン・レゲエに細美武士の英語詞を乗せた「BLESSING」もまちがいなくハイライトのひとつ。他にも人気ラスタ・アーティストTURBULENCEや日本でもお馴染みのシンガーTERRY LINEN、新世代ジャパニーズHIP HOPの旗手・サイプレス上野、その名の通りゴキゲン全開で突き進むGOKIGEN SOUNDなど豪華フィーチャリングの枚挙にいとまがない。
 HIP HOP DJを発端にセレクターからサウンドマン、今回はついにプロデュースも経験した。そんな彼に聞いてみたことがある。世の中の人に肩書きを問われたら、なんと答えるのだろう? 
「The BK Sound、胸を張ってそう答えたいです」
 このデビュー・アルバムに合わせてアーティスト表記を新たにした。くしくも従来のBKというアーティスト名の名づけ親は、ソロ始動の最初の波紋を心へと投げかけた湘南乃風のHAN-KUN。「道を切り開いていくのを見させてもらってきたレペゼン湘南乃風の自分としては、絶対にオリジナリティを提示していかきゃならない」。そう、次なるステージへの第一歩となる今作は、「HIP HOPやレゲエを含め、今まで通過してきた音楽を踏まえた上で作った音楽人生の集大成」だ。タイトルは、『One』。新鋭による第一幕は、新たな大風を起こすのか? 
「いろんな音楽が溢れてる中で、若い世代に異色を放つ作品を提案して行きたい。こんなに好き勝手やってる大人もいるんだぜって」
 The BK Sound=ブランニュー・キラー・サウンド、戦闘開始だ。


茂木博志(WOOFIN’編集部)